短期集中歯周治療とは?
短期集中歯周治療とは、歯周治療に起こりうるリスクを最大限考慮し、身体の内側と外側から歯周病の原因となる細菌にアプローチし、集中的な治療を行うことで歯周病から患者様を治癒へ導く歯周治療です。当院にも長年歯周病でお悩みの患者様が多く来院されます。
歯周病は細菌との戦いなので、原因を断ち切り二度と歯周病で悩むことのないメンテナンスまで包括的な治療を行います。
短期集中歯周治療の必要性
歯周治療に関するリスクを排除しながら最も高い効果を発揮するためのアプローチが重要になります。
当院がなぜ短期集中治療を必要としているかご説明致します。
菌血症という問題を回避する
菌血症とは、血液の中に歯周病原菌が入り、炎症反応を起こすことです。
どうして血液の中に入り込むのかというと、歯石を取るときには機械的にガリガリと歯石を取りますが、そのときに歯周病に罹患している部位から細菌が血管内に入り、急性の炎症反応が起こります。
歯石除去をした患者さんから熱がでた、倦怠感があるなどの報告が時々ありますが、これは菌血症による炎症反応が原因と考えられます。
当院ではこの菌血症を防ぐために、抗生物質による口腔除菌治療でお口の内外の細菌を除菌してから歯周治療を行うようにしています。
また、歯周病は細菌に感染することによって発症します。つまり、細菌を除菌しなければ歯周病は改善しないと言っても過言ではありません。そこで通常の機械的治療ではなく、歯周病の原因となっている細菌を特定し、お薬によるアプローチによって改善を目指していくのが歯周内科です。
当院では歯周内科治療を基本として、短期治療の一環として、機械的治療と口腔除菌治療を組み合わせた治療を行っています。
治療中の再感染を防止する
通常の歯周治療は複数回に分けて進めます。
しかし、複数回に分けることで細菌を除去したとしても次の治療期間の間に治療が完了していない部位から再感染をしてしまいます。
当院では抗生物質による口腔除菌治療を用いてお口内外から細菌除菌した後に1度で機械的な歯石除去を行うことで口腔内の歯周病原菌をほとんど除菌させることが可能です。
こうすることで、歯周治療の効果が高くなり、再発しにくい口腔内を実現することができます。
歯周病の原因は「歯周病原菌」です。
この細菌が除菌できていないと治癒は見込めないですし、治療中の再発やお身体への負担も大きくなります。歯周治療に関するリスクを考慮することが、短期集中歯周治療を必要とする理由になります。
短期集中歯周治療の解説
抗生物質(ジスロマック)の服用
ジスロマックはプラーク(バイオフィルム)内の歯周病菌にアプローチできる現在では唯一の抗生物質です。
歯周病は細菌との闘いなので、身体の内外から除菌していくことが何よりも重要です。そのため当院ではジスロマックを服用いただいてから治療を行うことを推奨しております。
FMD(フルマウス・ディスイン
フェクション)
FMD(フルマウス・ディスインフェクション)とは、お口の内外から細菌を除去する歯周治療の一つです。歯周病原菌となるプラーク(バイオフィルム)は、物理的なアプローチによる機械的清掃(クリーニング)によって除去するしか方法がありません。
しかし、クリーニングだけでは除菌が不可能な場合があります。それは体内に生息することができる一部の歯周病原菌の存在です。
体内に生息できる歯周病菌の場合、クリーニングによる除菌は残念ながら不可能ですので、抗生物質の服用をしていただき体内に潜む細菌を除菌していきます。
同時に、クリーニングを1度にすべて行うことで除菌力は格段に高まります。
SRP・イリゲーション
SRP
スケーリング・ルートプレーニングと呼ばれる処置で、スケーリングは歯石やプラーク(バイオフィルム)の除去を行うことで、ルートプレーニングは歯垢が根面につきにくくするために根面を滑らかにする処置です。
イリゲーション
歯ブラシが届かない歯周ポケットに対して、除菌水を用いて細菌を徹底的に洗浄することをイリゲーションと言います。
3DS(口腔除菌療法)
3DSとは、Dental Drug Delivery Systemと言い、薬剤による除菌を行うシステムです。
マウスピースを作成し、その中に薬剤を入れて装着することで、歯周病の原因菌を除菌させます。医院とご自宅の両方で行うことで、除菌の効果は高まります。
短期集中治療は歯周内科+口腔除菌療法+FMDが最も効果を発揮します
FMDはフルマウスディスインフェクションと呼ばれており、1回でお口全体のバイオフィルム及び歯石を機械的治療で取り除く治療です。
このFMDを行う前に抗生物質の服用・口腔除菌療法を行うことによって極めて高い治療効果が期待できます。
保険診療ではお口の中6つに分割し、少しずつ治療を進める必要があるため、次の予約までには患者様のご都合を考慮すると1週間以上間があいてしまい、その間に歯周病の細菌が治療未完了の部分から完了する部分に完成するリスクがあり、治療完了に関しても2〜3ヶ月かかってしまうことがあります。
しかしFMDでは抗生物質・口腔内除菌療法を併用するためわずか1回で効果の高い治療結果が得られます。
当院では「短期集中歯周治療」として、患者様に負担が少なく、最大限の効果を発揮するこの方法を実践しています。
短期集中歯周治療の流れ
当院では初診時に必ず口腔内検査を受けていただいています。
詳しくは初診の流れをご覧ください。
1予防プログラム(1〜3回)
予防ブログラムはお口の衛生環境を整えるために重要なプログラムです。短期集中歯周治療における予防プログラムの目的は、歯周病の原因である細菌に侵されない環境をご自身で作る習慣をつけていただくことです。
歯科医院で治療や予防処置をする時間よりもご自宅での生活時間のほうが圧倒的に長いので、ご自身で清潔な口腔内を維持できるようにならないと、歯周病はあっという間に再発してしまいます。
患者様によっては「回りくどいことをしないで早く治療をしてほしい」と思われることもありますが、そもそもの原因が細菌に侵されるお口の環境にしていたという根本的な問題を解決しない限り良い治療結果及び治療後の長期的な安定は得られません。 患者様にはご理解いただき、歯周治療の第一歩として予防プログラムを実践していただきます。
この予防プログラムが終わる頃には、歯周病の状態にも変化が起き、治癒へ向けた兆候が見られます。
2型取り・マウスピースの
作成
3DS除菌療法を行うためのマウスピースを作成します。そのために型取りを行い、患者さんの歯列に最適なマウスピースを作り薬剤がきちんと行き渡るようにします。
3ジスロマック
(抗生物質)の服用
口腔内の細菌を除菌及び静菌させるために、ジスロマック(抗生物質)を服用していただきます。
概ね治療の3日前に服用を開始していただきます。
4FMD・SRP・イリゲーション・エアフロー・3DS
歯周治療を開始致します。1日で全顎のクリーニングを行います。ジスロマックにより体内からプラーク(バイオフィルム)へのアプローチ、機械的清掃によって体外から物理的なアプローチによって、徹底的にクリーニングを行います。
5全顎イリゲーション・3DS・ジスロマックの服用
全顎のイリゲーションや追加でSRPを行い、歯周ポケットを徹底洗浄します。また、3DS除菌療法も同時に行い細菌の除菌を継続的に行います。3DSは歯科医院だけでなくご自宅でも行っていただきます。FMDの1週間後と2週間後の2回行います。
2回目にはジスロマックを処置後すぐに服用していただき、徹底した除菌を行います。
6再検査(PCR検査)・
イリゲーション
口腔内の再検査を行います。このときリアルタイムPCR検査を行い、細菌の量(特にレッドコンプレックス)を数値化することで、歯周病の改善度合いやリスク判定を行います。検査終了後、イリゲーションを行います。
7再評価・治療結果の説明・治療計画の相談
初診時からの変化を再評価し、改善度の判断もこの時に行います。検査結果を説明し、良好であれば歯周治療は完了しメインテナンスへ移行します。引き続き、歯周病に関連する因子(噛み合わせ)の改善や虫歯治療など必要な治療について計画を立案し、患者様とご相談を致します。
治療後の注意点
治療後良好な状態になったとしても「再発するリスクは常に隣り合わせである」ということです。
したがって治療後に注意していただきたい点をお伝えします。
- 口腔内を清潔にすることを心がけましょう。つまり、適切な歯磨きを毎日しっかり行うことが大切です。
- 定期検診、メンテナンスをしっかり行いましょう。歯科医師・歯科衛生士のチェックを受け、虫歯や歯周病が再発しないような口腔環境を維持することがとても重要です。